キタキツネによる寄生虫のリスク
北海道は、豊かな自然と他の地域ではあまり見られない動物たちに出会える、素晴らしい土地です。
その中でも、北海道を代表する動物としてキタキツネがいます。
かわいらしい風貌や他の地域にはいない珍しさから、観光客が見つけると近づきたくなるものです。
しかし、キタキツネには注意が必要です。
その一つは、寄生虫のリスクがあるということです。
エキノコックスという寄生虫で、キタキツネの糞便の中にいて感染する可能性があります。
もちろん、キタキツネのそばに近づいたり体に触ったからといって、すぐに感染するわけではありません。
しかし、何らかの形で糞便に含まれていた寄生虫の卵が人の手に付いたり、汚染された水を飲んだりすると感染する恐れがあります。
エキノコックスは感染してもすぐに発症することはありません。
通常5年から10年という、長い年月潜伏した後に症状を出します。
症状として、肝臓の血管や胆管が嚢胞によってふさがれてしまい、肝機能が侵されていきます。
その嚢胞が破裂すると、寄生虫が血流に乗って体中の臓器や脳にたどりつき、そこでも転移を引き起こすこともあります。
何も対処しないと、90パーセント以上が死に至るという恐ろしい感染症なのです。
そのため、キタキツネと人間との接触を減らすことはとても大事です。
また、キタキツネの糞便によって汚染された川の水などで感染することもありますので、アウトドアなどできれいに見えるとしても川の水を汲んで生で飲むことがないようにしましょう。
キタキツネがエサをねだってきても近づかない
北海道外からの観光客が多くなってからは、キタキツネが人に近寄ってエサをねだる光景が見られるようになりました。
とてもかわいい動物ですので、観光客としてもエサをあげたくなってしまいます。
しかし、上記のような感染症を防止する意味でもエサをあげるべきではありません。
また、エサをねだってそれで生きていくことが習慣になると、キタキツネも食糧確保の本能を忘れてしまう可能性があります。
実際にエサを人間からもらっていた個体が、自分で捕食行動を取らなくなってしまい餓死に至るケースが見られています。
人間に近づくことでエサをもらえると知って、車が高速で行きかう道路に近づくようになり、結果として車にはねられて死ぬという例も多く見られます。
人間にとっても重大事故につながりかねない危ない状況ですし、キタキツネが事故によって死んでしまう可能性も高くなります。
こうしたことから、たとえかわいい動物であっても、やはり野生動物と人間との距離はある一定に保つことが大事です。
お互いの生活と安全のために、近づかないようにするというのを心がけましょう。