アイヌの歌

ウポポは、アイヌ語で「歌」を意味します。
穀物を臼(うす)に入れて製粉する間に歌われるものを、「イウタウポポ(杵歌)」と言います。
楽器を使わなくても、手拍子や合いの手を入れることで、歌はアイヌ人の暮らしの中から生まれています。

また、子守唄なども「イヨンノッカ」と呼ばれ、赤ん坊をあやしながら歌われます。
アイヌの歌は、伝承動揺のように古くから伝わる子守唄というものではなく、その場で歌われる即興性が高いということです。
お母さんが赤ちゃんをあやすために、そのときの気分で作るオリジナルの歌です。

歌以外に、「ユカラ」という叙事詩も語られると言います。
ユカラには、短いものもありますが、何日もかけて語られる長いものもあります。
アイヌ人は文字を持たないため、ユカラは文章ではなく、口頭で語り伝えられてきました。

アイヌの踊り

アイヌ人の間には、動物の姿をマネた踊りが伝わっています。
キツネの動きをマネた「チロンヌプリムセ」という踊りや、ネズミの動きをマネた「エルムウポポ」など、動物の動きが踊りのもととなっています。

踊るのはおもに女性達で、「シントコ」という楽器のフチを叩きながら拍子を取ったり、みんなで大きな輪になって歌いながら踊ります。
男性もまったく踊らないということはありませんが、「クリムセ」と呼ばれる弓の舞や 「エムシリムセ」と言う刀の舞のようなもので、女性の歌って踊るというようなものではないようです。

また、悪魔払いをするための踊りもあり、火事や死人が出たときなどに災いを振り払う目的で踊ります。
悪魔払いの踊りは、ドシンドシンと足を踏み鳴らして行われる「悪魔払いの行進」がもとになっていると言われます。

アイヌの楽器

アイヌの代表的な楽器に、「ムックリ」というものがあります。
ムックリは口琴で、竹製のものと金属製のものがあり、その長さは10~15cm、幅は1cmほどです。

薄い板の真ん中に「リード」が付いていて、リードの根元には棒のついた糸が結びつけられています。
結びつけられている糸をひっぱると、リードが振動して「ビョーンビョーン」という音が出ます。
ムックリを口にあてることで、さまざまな音色を奏でることができます。

また、「トンコリ」というのは弦楽器で3~5本の弦が張られており、ギターや三味線のような構造をしています。
特に、5弦のものが多く使われていましたが、これは「五弦琴」と呼ばれます。
ハーブのような音色に近く、座ってトンコリを斜めに持って、両手の指で演奏します。

器用なアイヌ人は、ムックリやトンコリを手作りして音楽を楽しんでいたということです。
現在は、これらの楽器を使って演奏している北海道出身のバンドがあります。
北海道出身のバンドは、アイヌ民謡などを現代風にアレンジして演奏しているようです。