アイヌ語で「人間」

アイヌ人は北海道に住んでいる先住民族ですが、かつては東北地方にも住んでいたと言われます。
アイヌとはアイヌ語で「人間」を意味し、「コタン」と呼ばれる集落で狩りをしたり、魚を釣ったりして暮らしています。
ただし、「アイヌ」と呼ばれるのは良い行いをする者だけで、行いの悪い人間に対しては「ウェンペ」と呼ばれるようです。

アイヌ語で部族を「クル」と言い、東を「メナシ」と言うことから、北海道の東部に住む人々に対しては「メナシグル」と呼び分けています。
また、西を「シュム」と言うことから、西部に住む人々を「シュムグル」と呼んで、呼び分けていました。
同じアイヌ人であったとしても、住んでいる場所によって呼び名が違ってきます。

アイヌ人が崇める神

アイヌ人はこの世のすべてのものには等しく神が宿っているとする信仰を持っており、神のような存在に対してアイヌ語で「カムイ」と呼んでいます。
カムイは、日本語で言うところの「神」や「仏」に該当します。
ただ、日本人の場合は仏像を拝んだり、お寺にお参りしたりしますけど、アイヌ人の場合はもっと自然です。

太陽や月、火や水、動物や植物、地震や雷といった自然現象までもがカムイに含まれるようです。
病気などの人間に災厄をもたらすものについても、アイヌ人はカムイだと言います。
また、天然自然のものだけでなく、人間が作った道具などの人工物についてもカムイとされています。

たとえば、アイヌ人はシマフクロウを「村を守る神」として崇めています。
シマフクロウは、猟をしている人にクマの居場所を伝える鳥と言われているので、村を守っているように見えるのかもしれません。
ヒグマもまた、「毛皮をまとったカムイ」として崇められていて、アイヌ人には神がそのような姿で人間界に降りてきていると思われています。

アイヌの儀礼

イオマンテというのはアイヌの儀礼のひとつで、動物を殺してその魂のカムイを神に返します。
シマフクロウやヒグマ、シャチなども、この儀礼に捧げられます。
イオマンテでは、祭壇を祭って動物の頭部などを捧げ、お酒を供えてカムイにお帰りいただくのです。

たとえば、冬眠しているヒグマを狩って儀礼に使いますが、ヒグマに子供がいた場合は育てます。
ヒグマの子供を育てて大きくするわけではなく、1~2年ほどしたら親グマと同様、イオマンテに捧げられます。
カムイとの別れを惜しんで、アイヌ人はヒグマの檻の周りを踊って回ると言います。

「熊の霊送り」または「熊祭り」と呼ばれるこの儀礼は、多くの狩猟民族の間で行われており、アイヌのイオマンテはその代表的なものです。
先ほどの例は「ヒグマのイオマンテ」ですが、ほかに「シマフクロウのイオマンテ」、「シャチのイオマンテ」などを行うアイヌ民族があります。